内閣府の推計によると、平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、首都圏において約515万人に及ぶ帰宅困難者が発生したことが分かっています。
これを受け、内閣府は「大規模地震の発生の伴う帰宅困難者対策のガイドライン」を発表し、各自治体や企業に対して、帰宅困難者への対応を取ることを努力義務としました。
今回は、企業が行うべき帰宅困難者への対策を、ガイドラインにそって分かりやすくまとめます。
目次
帰宅困難者対策とは?
帰宅困難者対策とは、災害時に発生が予想される帰宅困難者への対策のことを指します。
企業が行うべき帰宅困難者対策は、大きく3つに分かれます。
一つ目は平常時における対応、二つ目は災害発生時の対応、三つ目が混乱収拾時以降の対応です。
今回は、特に平常時における対応について詳しく見ていきましょう。
・企業の帰宅困難者対策~平常時~
災害発生時に備えて、企業は以下の6つを行うことが求められます。
① 施設内待機の計画策定と従業員等への周知
② 施設内待機のための備蓄
③ 平時からの施設の安全確保
④ 従業員等への安否確認手段、従業員等と家族との安否確認手段の確保
⑤ 帰宅時間が集中しないような帰宅ルールの設定
⑥ 年 1 回以上の訓練等による定期的な手順の確認
帰宅困難者のための備蓄は努力義務!罰則は?何を備蓄すべき?
企業が平常時に行なうべき「② 施設内待機のための備蓄」については、「企業等は、従業員等が事業所内に待機できるよう、3日分の必要な水、食料、毛布などの物資の備蓄に努めるものとする。」とされているほか、東京都の条例においても従業員の3日分の備蓄が努力義務として記載されています。
努力義務に法的拘束力はなく、違反した場合でも罰則を科されることはありませんが、努力義務違反によって被害を受けた第三者から損害賠償を請求されたり、監督官庁から行政指導を受ける可能性があるので注意が必要です。
企業の防災備蓄は最低3日分必要
同ガイドラインでは、最低でも3日分の必要な水、食料、毛布などの物資を備蓄することが求められています。
3日分の備蓄量の目安はそれぞれ以下の通りです。
・水:1人当たり1日3リットル、計9リットル
・主食:1人当たり1日3食、計9食
・毛布:1人当たり1枚
その他の品目については、物資ごとに必要量の算定が必要です。
なぜ3日分?人命救助の分かれ目「72時間」とは
「なぜ3日分も?」と思われるかもしれませんが、これには理由があります。それは、救助活動の現場では災害後3日(72時間)が勝負と言われているからです。 災害発生時に多くの人が一斉に帰宅しようとすると道路や歩道が多くの人で埋まり、大渋滞が発生します。このことにより、警察・消防・自衛隊の車両が速やかに現場に到着できず、人命救助のカギとなる72時間の救助・救命活動に支障をきたすことになってしまいます。こうした事態を防ぐためにも、企業は従業員の一斉帰宅を抑制し、3日間程度は待機できる環境を確保しておく必要があるのです。
企業は何を備蓄すべき?チェックリストも活用しよう
企業が備蓄すべきものとしては、以下のような品目が挙げられます。
・水 :ペットボトル入り飲料水
・主食:アルファ化米、クラッカー、乾パン、カップ麺
・その他の物資(特に必要性が高いもの)
このほかにも、非常用発電機や防災ライト、ヘルメット、災害用無線機など、事業継続に必要な防災用品を平時から準備しておくことも重要です。
企業備蓄チェックリスト
今回は、誰でも気軽に備蓄が始められるよう、企業備蓄チェックリストを用意しました。一気にすべて揃えようとせず、少しずつでも備蓄をはじめることが、企業備蓄の第一歩です。ぜひ、チェックを埋めながら企業備蓄を進めていきましょう!
帰宅困難者対策は企業の義務
災害時の一斉帰宅を抑制し、従業員を企業に一時待機させることは、従業員の安全確保として、また救助を必要としている人に救助が届くようにするために重要です。
その備えとして、平時から非常食の備蓄をしておくことは企業の努力義務となっています。まだ備蓄ができていない場合、ぜひ今回ご紹介したチェックリストを活用してみてください。
すでに水や食料を備蓄している場合は、消費期限にも気を付けて定期的に入れ替えを行いましょう。
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