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東日本大震災や熊本地震、各地で毎年発生する台風や大雨による災害などを経験し、企業におけるBCP対策に対する重要性の認識は一定程度浸透してきたと言えます。
2022年5月の帝国データバンクの調査によるとBCP対策を策定済みの企業が全体の17.7%、策定中もしくは策定を検討している企業まで含めると、49.9%まで上がっており、BCPに対する意識は高まってきています。しかし、企業規模別にみると、大企業は33.7%であるのに対し、中小企業は14.7%に留まっています。
また、BCP対策の策定検討している企業へ、どのようなリスクによって事業継続が困難になるか聞いたところ、最も高いのが自然災害で71%、新型コロナウィルスの影響が低下した一方、情報セキュリテイリスク(6.7%増)、物流の混乱(5%増)、戦争やテロ(6%増)などが大幅に増加しました。
事業の継続が困難になると想定しているリスク(複数回答)
大企業 | 中小企業 |
①自然災害 | ①設備の故障 |
②感染症(インフルエンザ、新型ウイルス、SARSなど) | ②物流の混乱 |
③情報セキュリティ上のリスク | ③取引先の倒産 |
④火災・爆発事故 | ④取引先の被災 |
⑤自社業務管理システムの不具合・故障 | ⑤戦争やテロ |
⑥情報漏えいやコンプライアンス違反の発生 | ⑥経営者の不測の事態 |
⑦製品の事故 | ⑦環境破壊 |
出所:帝国データバンク 2022年5月調査
実施あるいは検討している内容を聞いたところ、従業員の安否確認手段の整備が最も高く66.6%、情報システムのバックアップ、調達先・仕入先の分散、予備在庫の確保などサプライチェーンの安定確保に向けた取組も検討されている。
更にBCPを策定している企業へ策定による効果を聞いたところ、従業員のリスクに対する意識が向上したが53.7%と一番高く、業務の定型化・マニュアル化が進んだ(31.8%)、事業の優先順位が明確になった(30.9%)が続いた。
一方、BCPを策定していない企業へ聞いたところ、策定していない理由のトップは、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」で42.7%、「策定する人材を確保できない」(31.1%)、「書類作りで終わってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい」(26.1%)といった項目が続きました。特に中小企業においては顕著な結果となっています。
BCPを策定していない理由(複数回答)
大企業 | 中小企業 |
①策定に必要なスキル・ノウハウがない | ①自社のみ策定しても効果が期待できない |
②策定する人材を確保できない | ②必要性を感じない |
③書類作りで終わってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい | ③策定する費用を確保できない |
④策定する時間を確保できない | ④ガイドライン等に自組織の業種に即した例示がない |
⑤リスクの具体的な想定が難しい | ⑤策定に際して公的機関の相談窓口が分からない |
出所:帝国データバンク 2022年5月調査
大地震による災害のみならず、近年とみに頻発している台風や豪雨による自然災害のほか、新型コロナウィルスによるパンデミックや中国などのゼロコロナ対策による部品調達への影響、サイバー攻撃によるシステム障害や情報漏洩、ロシアのウクライナ侵攻による戦争など企業を取り巻くリスクは増大しており、BCPに対する重要性は今まで以上に高まってきています。
この調査によるとBCPを策定している企業の数は17.7%でしたが、前年に対しては微増に留まっています。BCPを策定していない企業においては、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」を上げる企業が4割を超え、「策定する人材を確保できない」が3割に及びます。特に中小企業からは「事業の7割が下請けであり、自社だけで構築するのは難しい」という声も多く、「理解はしているが策定できない」というのが本音のようです。この調査結果から、中小企業のBCP対策は、毎年のように台風や大雨に襲われる日本においては喫緊の課題であることが分かります。次回は事例を上げながら、中小企業向けのBCP対策について述べたいと思います。
出所:帝国データバンク「特別企画:事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」(2022年6月14日)https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p220606.pdf
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